第三回 アジア男声合唱祭の感想 KLグリークラブOB 田中 充



先ず、第一に、ホストであるマニラグリークラブ並びに裏方を努められたマニラ関係者の皆様の周到なご手配と当日の淀みない進行に大変感銘を受けました。細やかなご配慮の中に、参加メンバーに不快感を与えないこと、定刻をきっちりと守ることを大方針にされていると拝察いたしました。特に後者については、失礼ながらあのフィリピンで全て定刻通り進められたこと見事という他ありません。また各団に担当の女性を配して、円滑な連絡と意志の疎通を図られたことは、新しい試みで、なるほどと感心しました。素晴らしいホストぶりでした、改めて感謝申し上げます。
思えば、第一回の合唱祭で、バンコックグリーのプロまがいのステージマネージメントに驚愕させられたときから、誰が提唱するのでもなく、「このフェステイバルを単なる自己満足の発表会に終わらせない、お客様にも何がしかの感動を持って帰ってもらおうという精神」が醸成されており、そのDNAが今回も充分引き継がれてきたということでしょう。伝統というには十年早すぎますが、その萌芽らしきものが見えてきていると感じました。
マニラグリー方々のみならず、参加団体の全員の、単に合唱好きだけではとどまらない、情熱、集中心、そして謂わば「くそ力」が、このフェステイバルをかくも盛会に導いたものと思っています。
では、そのような集中力、くそ力の源はどこにあるのでしょうか。独断と偏見で次の2つを挙げたいと思います。
一つは、「俺たちに明日(来年)はない。」ということです。宿命的に毎年 1/3のメンバーは入れ替わるという状況下、今年の合唱祭には参加できても来年はどうなるか分らないということから、弥が上にも集中力が高まったのではないでしょうか。事前の練習、合唱祭参加のためのスケジュールなど皆さんお仕事の支障にもある程度目をつぶって、ぎりぎりのところでやりくりしてこられたと思います。また止む無く参加することが出来なかった方々の無念も察して余りあります。
二つ目は、合同演奏と亀井さんという素晴らしい指導者を得たことです。合同演奏がプログラムの目玉であることはもとより、各参加メンバーにとっても90人という大人数で演奏できる貴重な機会であり、どんな演奏になるか、ちょっぴりの不安を押しのけて大きな期待に胸を膨らませるものがありました。これは当日だけ集まって即席にやることを嫌い、一ヶ月以上前から巡回指導していただいた、亀井さんのご苦労が礎であることは言うまでもありません。巡回指導において、初めてのメンバーにとっては、「ピアノは強く」などと、目からウロコのアドバイスもありましたでしょうし、また練習後の飲み会での雑談(これがまた貴重な時間です)で、知らず知らず、意識が高揚されていったのだと思います。 演奏会前日の合同練習では、初対面の方はたくさんいましたが、既に気持ちは一つになっており、一・二回の練習でぐっと完成度が高まりました。「男声合唱の魅力はピアノやで」ということで、自制の極限が求められ、気が付くと、本番では、ベストの演奏になっていました。あのリリカルな山田耕筰作品集を90人でどう演奏するのかなと思いきや、全員亀井さんの手綱に存分に操られていました。終止、無私な姿勢に頭の下がる亀井さんではありますが、演奏では、無声音「し」のこだわりなど妥協を許さない厳しさも示され、ご自分でも楽しんでおられるように見えました。ピアニッシッシモに苦吟した甲斐がありました。
亀井さんのご友人の川村さんが、第一回からご夫婦で自費参加頂いており、批評をお願いしています。今回も3時間ガマンして聴いていただき、各団の批評をまとめて頂いていた「はず」です。 というのも、毎回打ち上げ会の講評では、亀井さんとの 「大亀・小亀の漫才批評」となるので、言いたいことの三分の一も発言されていないからです。合唱祭ですから文字通り、フェステイバルであって、コンクールではありませんが、やはり正しい批評も冷静になって聞きたいと思います。そこで、川村さんにお手間を取らせますが、以下をお願いできないでしょうか。
1) 各団の良かったところ、評価すべき点(無くても無理やり絞り出して)を全団体に公表して頂く。
2) 不満足であった点、改善が求められる点については、各団の代表に連絡頂く。川村さんも、あの関西学院グリークラブ全盛時代に指揮を務められた実力者です。目からもう一枚ウロコが落ちることでしょう。
毎年 三分の一のメンバーが入れ替わる宿命にありますが、アジア男声合唱団の歴史を積み上げるためにも、合唱技術レベルの向上は不可欠です。 川村さんの辛口批評を真摯に聞いて、落ち込むのも次の飛躍のために必要かも知れません。
打ち上げ会で、アジア男声OB発会が話題になりました。私は、予ねてから、そのためには、やはり優れた音楽指導者が必要だと思っていましたところ、香港グリーの清水さんが、今年は本当に本帰国になるということで、OB会についても前向きなご発言でした。 もし、清水さんが音楽指導者を引受けて頂けるなら、ぐっと実現性が高まると期待を抱いています。「日本駐在」の面々もついて行きやすいでしょう。私も技量は不十分ですが、清水ミュージックに酔ってみたい気分です。
最後に、今回は、プログラムに、亀井さんのご友人ということで日本合唱連盟理事長浅井敬壹様からの祝辞が掲載されていました。また演奏会では同理事長からの祝電も披露されました。大変ありがたいことです。 日本合唱連盟というとやはり一つの権威ですね。 権威ある方からご祝辞を頂くと言うことは、アジア男声合唱団の活動が日本でも注目され始めたということかも知れません。 これから将来どうなるのかは予測の及ぶところではありませんが、私見ながら、アジア男声合唱団は、やはりその生い立ちと性格からして自由闊達で柔軟な独自の道を歩んで行くのだろう、なんて勝手に思っています。