アジアに生きる男たちの贅沢 KLグリークラブ 加藤尚宏



「日本を離れ、アジアに根を張る男達が、合唱で和する。そこにはきっと、他では味わえない、魂の共鳴があるに違いない。世界を知る男達の寛さと逞しさが、美しきハーモニーとなって、文化を超え、歴史を超えて、世界中の人々の心に響き渡ることであろう。」
全日本合唱連盟の浅井敬壹理事長の予想通り、マニラで開かれた「第三回アジア日本人男声合唱祭」では、"他では味わえない魂の共鳴があり、美しきハーモニーが観客席を埋めた聴衆の心に響き渡った"ことは確かである。いや、観客席だけでなく、ステージで歌っている私たちも、言い知れぬ感動に包まれたのは、100人近い男たちの声が、亀井指揮者の見事な指導と指揮が、絶妙のハーモニーを作り出したからではないだろうか?
翌11日の「日刊まにら新聞」は、一面左肩に写真入りでこれを報じたが、
会場酔わせた歌声
96人の合同合唱も
アジア日本人男声合唱祭
の見出しは、合唱祭のすべてを、ひと言で言い当てている。
単独演奏の「Norman Luboff」では、2回目の完全暗譜に挑戦したが、前回より進歩したことは、マニラに入ってからは、手のひらに入る小さなメモも見なかったことである。では何を見たのか?指揮者の亀井さんは、練習の時「指揮者を見よ!」と繰り返し言うが、今度気がついたことは、自分は指揮者のどこを見ていたのかという反省である。指揮者の身体の動きと顔と腕を、これまでは見ていたが、これでは十分ではないことに気がついたのである。
指揮者の腕を下ろすのに合わせて一斉に歌い出すためには、腕を上げる時にみな一緒に息を吸い、指揮者の腕ではなく「指先」を見なくては、躍動感に溢れた亀井さんの指揮にはついてゆけない。KLでの練習の最後の頃から「指先!指先!」と自分に言い聞かせながら、暗譜のプロセスをひとつずつこなした。合唱団経験のある方には、当たり前のことであろうが、私ども素人には、ここまでくるのに5年かかったことはご理解いただきたい。
本番のステージでは、亀井さんの指に神経を集中し、亀井さんと一緒に身体を動かして歌わせていただいたため、気持ちよく歌えたのは感謝である。
圧巻は、何と言っても「合同演奏」である。100人近い男たちが一堂に会し、同じステージで、同じ歌を歌うことは、合唱好きのものには「贅沢中の贅沢」というほかない。息を入れたピアニッシモのハーモニー、ウボイの最後のように、腹の底からの大声で歌い上げるフォルテッシモのエンディング、こんな「贅沢」は他にないと思う。
アジアにいたから、グリーに入ったから、合唱祭に参加したから、味わえる「贅沢」だと思う。私には、もう一つおまけの「贅沢」があった。聴衆の皆さんと一緒に"Till We Meet Again"を歌った時、はっと気がつくと、私の左には亀井さん、後ろには川村さんがおり、重厚なベースの声が聞こえてきた。二人の大ベテランと一緒にベースを歌うことが出来たことに、身体が震えるのを覚えた。
一年に一度、アジア各地を歴訪できるのは、合唱祭のお陰である。翌日の日曜日に、私は、現地の日本人教会を訪れ礼拝を共にすることを習慣にしている。アジアの日本人教会が、合唱祭と似たようなネットワーク作りが出来ないかとの可能性を模索するためである。
マニラグリークラブの皆さん、
本当にいろいろありがとうございました。綿密な計画と周到な準備を重ねて合唱祭に備えたことがあちらこちらに現れていました。「大成功!大感謝!」の言葉をもって、感想文としたいと思います。