第3回アジア日本人男声合唱祭 参加感想 KLグリークラブ 福山淳三


指揮者亀井さんの各場面での味わい深い言葉と共に、私のマニラでの感想は重なりあって現れてくる。「見渡して数えたら約25名でした」これは2月9日、前夜祭でアジア男声合唱祭に連続3回出場した人の挙手を、今回出場した100人弱に求め、確認した後の言葉である。私も手をあげた。それまで、合唱に全く縁のなかった自分が連続出場しているのだから、驚きである。KLグリーの仲間にも、出場したくても処々の都合により、断念せざるを得なかった方が、5〜6名いる。自分は幸福であったといえる。そしてこの数はアジア男声合唱祭が続く限り、増えることはなく減っていく数である。10回の記念大会でこの数はいくつになるのか、その連続出場者は表彰されるでしょうし、その中の1人は亀井さんであり、さらに20年、30年と指揮活動を続けてほしいと思いながら聞いた。
「男声合唱の美しいハーモニーは、ピアニッシモにある」と彼は説く、その例えに「大声のffで"愛してる"と彼女に言うより、ppで……強く"愛してる"と言った方が、効き目があるでしょう」と。私にはどちらも経験がないが想像はでき、その言に首肯する。ただし、亀井さんからも「斯くして現在の妻を口説いた」と言う話は聞かなかった。

さて、そのハイライトが「からたちの花」であったろう。楽譜にテナーパートのpの数を拾ってみる。pが14あり、ピアニッシモppが6、さらに何とpppが3もある。その他はmfが6で、fはわずか1つ。pのオンパレードである。数だけ14とか言ったのではそのすごさが伝わらないから、めんどうを厭わずに書いてみる。(p,p,p,p,p,p,p,p,p,p,p,p,p,p)、(pp,pp,pp,pp,pp,pp)、(ppp,ppp,ppp)である。短い「からたちの花」の歌の中にこんなにも多くpがある。彼の言によると、私たちがpと思って出している声はmfであるそうだ。それから考えるとpppなどはどうなるの?と首をかしげる。私のような未熟者は「声はださねど、口パクパク」が妥当なのだろう。だけど当日、歌詞のおわり「さいたよ」のpppが、100人弱の声の束の中に自分の声も和し包まれ、美しく調和し溶け込んでいるのを聴いて、素敵でいいなァ〜と感動している自分がいたのは確かだ。たぶんこの時、合唱している大の男たちが味わっている「祝福」の瞬間なのだろう。

川村さんによる今回の各クラブの採点は「95点から60点の間にある」のだそうだ。これを聞いて、どのクラブも自分の所が95点と思っていることでしょうし、私もKLグリーがそうだと確信する。その確証は暗譜である。暗譜であるから、楽譜に頼れない。いつまでに覚えなさいと言う指示もある。それゆえ、ずぼらな私も毎日気にしつつ少しは練習をする。たぶん暗譜でなかったら、私は楽譜に頼り日々ほとんど練習しないだろう。だから暗譜の練習をしただけ上手になったとも言える。もっとすばらしいのは、皆の目は指揮者に注がれ、指揮者の体全体から発せられる微細なサインを見逃すまいと気を使うことになり、そのテンポにあわせて歌うことが出来る。そのうえなお、少しゆとりがあれば、観客席の表情も観察することもできる。今の所これはKLグリーだけであるが、どのクラブも更に上達しようと思えば、この亀井式指導方針「暗譜」のスタイルになっていくのではないかと予測するのだが、どうだろう。

最後に蛇足ながら付け加えると、第1回大会で初めて手にした「U Boj」の楽譜に誰がこのようなうたを歌うのかといぶかった私が、KLグリーで3年過ごし、今回は曲がりなりにも歌っているのである。更に後3年したら田中充さんのように朗々と歌えるだろうか。